α、β、γ、δそしてο(オミクロン)。δ(デルタ)まではいいが、オミクロンなどは聞きなれないギリシャ文字である。新型コロナウイルスは変異を繰り返し、七つの波浪を重ねて沖縄県ではとうとう6140人(R4.8.3)と6000人を超え、史上最高の感染を記録した。δ株は重症化が多かったが、オミクロン株は感染力を強いものの、実感として重症化率は低い。しかし、感染爆発により、高齢者施設、障害者施設など医療の脆弱な所に広がり、施設療養を優先するも低酸素で入院する患者が後を絶たなかった。さらに、第7波は医師や看護師などの医療従事者が感染者、濃厚接触者となって労働喪失が著しく医療提供に大きく支障を来したのが特徴である。
ワクチンや飲み薬が普及し、2年前の「かかったら大変」から、今では「かかっても大丈夫」と受け止め方が変遷してきた。感染者は連日のように記録を更新したが、国もオミクロン株の特徴を踏まえ、緊急事態宣言を出すことなく、コロナとの共存を目指してきた。Withコロナに向けて、全数報告から重点報告へ舵を切ったのは日常回帰への入り口である。 一日も早く通常診療に戻り、当院の根本問題である「医師不足」に取り組みたい。
沖縄北部医療センターも牛歩の歩みであるが、やっと基本設計に漕ぎつけた。高度急性期機能としてがん手術に対しるロボット手術、脳・循環器に対するカテーテル治療やTAVI、大動脈解離や大動脈瘤に対するステント治療のためのハイブリッド手術室の整備、AI診断、医療DXにも力を入れていく。また、広大なやんばる地域の救急・災害の救命向上のためヘリポートを常設し、1~3次救急に対応する。さらに、健診センターや地域包括ケア病棟を併設し、各医療機関と連携して医療・介護、予防を一体化した“健康ランド”に期待が膨らむ。
当院も北部医療センターに引き続ぐまでは「北の砦」として地域に貢献する病院として真価を発揮したい。
2022年10月14日 病院長 久貝忠男