沖縄県立北部病院
院長
久貝 忠男

~できないことはみんなでやろう~

「2024年問題」。新聞、TVなどでは運送業、建設業の残業規制がよく取り上げられるが“医師も”と付属的取り扱かわれ世間の関心が薄い気がする。最終的には消費者へ、患者さんへ少なからず影響があるはずである。

コロナ禍の最中、医師の働き方を進めるべきか否か議論があったが、いよいよ今年4月から始まる。一般企業から猶予されること5年。残業規制はあくまでも持続可能な医療体制づくりのスタート地点である。人手不足は全産業に共通する課題であるが、当院のように医師不足の中で残業規制を乗り切るのは容易ではない。タスクシェアやシフト、複数主治医制、オンライン診療、宿日直許可など準備された制度設計を駆使して取り組まなければならない。でも機能するかどうか?正直なところやってみないと分からないのが本音である。

宅配は人手不足で半日~1日遅配し、建設業では工期が延びるそうであるが、医療はそうはいかない。業務改善し、救える命を救わなくてはいけない。二律背反の大変難しい問題に直面している。

残業規制は人手不足に拍車をかけるが、一方でデジタルやロボット技術の導入が加速する契機になることが十分予想される。自己犠牲の上に成り立つような医療体制はなくなっていくだろう。そして古い考えから脱却できない病院は選ばれなくなるだろう。

この機会を好機と捉え、業務効率化や生産性の向上を自身のやりがいや健康に結びつけ日々の業務に取り組む原動力にしなくてはならない。その工夫は各個人の意識改革にゆだねられている。もちろん働き方改革は病院側の努力だけでは成り立たない。患者らの意識改革、理解なしにはどうしようもない。限られた医療資源、人材を最大限に活用するには「コンビニ受診」を控えてほしい。昼間受診できるものは昼間に受診する。

当たり前だった医師の「長時間労働の文化」はかかわるすべての人の協働なくして見直すことはできない。当院は「2024年問題」を将来の危機を乗り越える試金石、地域医療の効率性、安全性を考える絶好の好機にしたい。そんな人材を求めている。


2024年4月1日  病院長 久貝忠男